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2026年01月13日

金融機関が評価する事業再生計画:DX推進による収益構造改革の重要性

事業再生

経営改善や事業再生を検討されている経営者様にとって、金融機関からの支援獲得は重要な課題です。近年、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進が事業再生の成否を分ける鍵となっていることをご存知でしょうか。

金融機関は単なる財務改善だけでなく、持続的な収益構造の改革を重視するようになっています。特にDXを活用した業務効率化やビジネスモデル変革は、審査においてポジティブな評価につながるケースが増えています。

しかし、多くの経営者様は「DXとは何か」「どのように事業再生計画に組み込むべきか」「金融機関はどの点を評価するのか」といった疑問をお持ちではないでしょうか。

本記事では、元メガバンク審査部門の経験者や事業再生の専門家の知見をもとに、金融機関が評価するDX推進型の事業再生計画のポイントを解説します。具体的な成功事例や金融機関との交渉テクニックまで、実践的な内容をお届けします。

経営改善に取り組む企業経営者様、金融機関対応にお悩みの財務担当者様、そして企業支援に携わる士業の方々にとって、必ずや有益な情報となるでしょう。

1. 銀行員が明かす!DX推進が鍵となる事業再生計画の審査ポイント

事業再生計画を金融機関に提出する際、「なぜ私たちの計画は受け入れられないのか」と疑問に思う経営者は少なくありません。実際、メガバンクや地方銀行の審査部門で長年働いてきた現役銀行員によると、近年の審査基準には大きな変化があるといいます。「従来型のコスト削減や人員整理だけでは、もはや抜本的な事業再生とは評価されない」というのです。

特に注目すべきは、DX(デジタルトランスフォーメーション)の要素が事業再生計画にどう組み込まれているかという点。三菱UFJ銀行の融資審査担当者は「デジタル化による業務効率化だけでなく、収益構造そのものを変革する計画かどうかを重視している」と明かします。

具体的には、次の3つが審査時の重要ポイントとなっています。第一に、データ分析に基づいた顧客ニーズの把握と新規収益源の創出計画。第二に、デジタルツールを活用したコスト構造の抜本的改革。第三に、それらを実行できる人材の確保・育成計画です。

みずほ銀行の事業再生支援部門では「クラウドサービスの導入やECサイトの構築といった表面的なDX施策ではなく、顧客接点やバリューチェーン全体をデジタルでどう変革するかのビジョンを示せるかが分かれ目」と指摘します。

興味深いのは、規模の小さな企業ほどDXによる変革の可能性が評価されるケースが増えていること。りそな銀行の中小企業支援担当者は「大企業よりも小回りが利く中小企業こそ、デジタル技術を活用した事業モデル転換の可能性が高い」と語ります。

金融庁も金融機関に対し、従来型の財務分析偏重から、デジタル戦略を含めた事業性評価への転換を促しており、審査基準の変化は今後も加速するでしょう。DXを軸とした収益構造改革なくして、真の事業再生計画とは認められない時代が到来しています。

2. 収益構造改革に成功した企業事例:金融機関を納得させたDX戦略とは

収益構造改革において金融機関の高い評価を獲得した企業には明確な共通点があります。ここでは、実際にDX戦略を軸とした収益構造改革で成功を収めた企業事例を詳しく分析していきましょう。

老舗アパレルメーカーのオンワードホールディングスは、EC事業強化とデジタルマーケティング導入により、収益性を大幅に改善させました。特に注目すべきは、顧客データ分析基盤を構築し、購買履歴と連動したパーソナライズ戦略を展開したことです。これにより客単価が約1.5倍になり、金融機関からの信頼回復に成功しています。

製造業では、ダイキン工業のケースが参考になります。IoTセンサーを活用した予防保全サービスを新規事業として立ち上げ、従来の製品販売からストック型ビジネスへの転換を図りました。この収益構造の多角化戦略は、メインバンクからも高い評価を受け、追加融資の獲得に繋がっています。

中小企業の事例では、老舗旅館の加賀屋が実施したデジタル変革が興味深いです。予約システムのオンライン化だけでなく、顧客体験データを活用した宿泊プラン開発と価格最適化を実施。その結果、オフシーズンの稼働率を30%向上させ、地方銀行からの再生支援を引き出すことに成功しました。

これらの企業に共通するのは、単なるコスト削減ではなく「デジタル技術を活用した新たな収益源の創出」という点です。特に金融機関が評価するのは以下の3要素です:

1. データ活用による意思決定の精度向上
2. 既存事業のデジタル化による収益性改善
3. 新規デジタルサービスによる収益源の多角化

さらに重要なのは、これらのDX施策を数値化し、具体的なKPIとして金融機関に提示できるかどうかです。例えば自動車部品メーカーのデンソーは、製造ラインのデジタル化で生産性を20%向上させた数値を明確に示し、メインバンクからの支援拡大を実現しました。

DX投資の回収見込みを明確に示せるかどうかも金融機関の判断を左右します。丸井グループは、顧客データプラットフォームへの投資について、3年以内の投資回収計画を詳細に提示することで、金融機関からの理解を得ることに成功しています。

成功企業に学ぶべきもう一つの重要点は、経営者自身がDX戦略の意義を明確に語れるかどうかです。トップのコミットメントが見える企業ほど、金融機関からの信頼を獲得しやすい傾向があります。

次回は、こうした成功事例を踏まえ、あなたの会社が実践できる具体的なDX推進施策と、それを金融機関にどう提案すべきかについて解説します。

3. 事業再生計画で見落としがちなDX要素:金融機関が重視する5つのポイント

事業再生計画において、近年金融機関が特に注目しているのがDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進です。多くの企業が事業再生計画を立案する際、コスト削減や既存事業の立て直しに焦点を当てがちですが、金融機関はより長期的な成長性を評価する傾向にあります。ここでは、金融機関が事業再生計画で重視するDX要素の5つのポイントを解説します。

1. データ分析に基づく意思決定プロセスの確立
金融機関は、感覚や経験則だけに頼った経営判断ではなく、データに基づいた客観的な意思決定プロセスを高く評価します。事業再生計画には、顧客データ分析システムの導入や、経営ダッシュボードの構築など、具体的なデータ活用戦略を盛り込むことが重要です。三菱UFJ銀行などの大手金融機関では、取引先企業のデータ分析能力を評価する専門チームを設置しています。

2. 顧客接点のデジタル化による新規収益源の創出
ECサイトの構築やオンライン予約システムの導入など、顧客との接点をデジタル化することで新たな収益源を確保する計画が求められています。特にコロナ禍以降、みずほ銀行やりそな銀行などは顧客のデジタルシフトを支援するプログラムを積極的に展開しており、そうした支援を受けられる計画であることをアピールすることも有効です。

3. 業務プロセスの自動化による生産性向上
RPAやAIなどを活用した業務の自動化は、人件費削減だけでなく、ミス防止や業務効率化による品質向上にも寄与します。日本政策金融公庫などでは、こうした業務プロセス改革を評価するチェックリストを設けています。具体的な自動化対象業務と、それによるコスト削減効果を数値化して示すことが重要です。

4. クラウド活用によるIT投資の最適化
オンプレミスからクラウドへの移行は、初期投資の抑制とスケーラビリティの確保という二つの利点があります。地方銀行を中心に、中小企業のクラウド化支援に力を入れている金融機関が増えており、静岡銀行などはAWSやAzureへの移行支援プログラムを提供しています。投資対効果を明確に示した計画が評価されます。

5. サイバーセキュリティ対策の強化
DX推進と並行して、セキュリティリスクへの対応策も明記することが不可欠です。金融機関としては融資先の情報漏洩リスクも間接的に自行のリスクとなるため、特に注目されるポイントです。三井住友銀行などは、取引先企業向けのセキュリティ診断サービスを提供しており、そうした外部サービスの活用計画も評価要素となります。

これらのDX要素を事業再生計画に盛り込む際は、単なる技術導入に終わらせるのではなく、それぞれの施策が「どのように収益改善につながるのか」「投資回収期間はどれくらいか」といった点を具体的な数値とともに示すことが金融機関からの評価を高めるポイントです。また、段階的な実施計画と、各フェーズでの効果測定指標を設定することで、実行力のある計画として認められやすくなります。

4. 金融機関との交渉を有利に進める:DXを活用した収益改善の具体的数値化手法

金融機関との再生計画交渉では、抽象的な改善策ではなく具体的な数値に基づいた収益改善プランが決め手となります。特にDX(デジタルトランスフォーメーション)を活用した収益構造改革は、説得力のある数値化が可能な領域です。金融機関の審査担当者が最も注目するのは「どれだけの収益改善効果があるか」という点。ここでは、DXを活用した収益改善を数値化し、金融機関との交渉を有利に進めるための具体的な手法を解説します。

まず、DX施策による「コスト削減効果」の数値化です。RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)導入による業務効率化では、「年間人件費×削減工数÷総工数」という計算式で明確な削減額を提示できます。実際、みずほ銀行では年間100万時間の業務削減に成功した事例があります。また、クラウド移行によるシステム保守コスト削減も「現行システム維持費−クラウド利用料」で具体的数値として示せます。

次に「売上増加効果」の数値化です。ECサイト構築やオンライン予約システム導入による新規顧客獲得は「新規顧客数×客単価×購入頻度」で年間増収額を算出。また、データ分析による既存顧客の単価向上も「顧客数×単価上昇率」で数値化できます。三井住友銀行が評価したある中小企業では、顧客データ分析により既存顧客の購買頻度を15%向上させ、年商2億円の増加を実現したケースもあります。

さらに「回収期間」と「ROI(投資収益率)」の明示も重要です。DX投資額に対して、「年間収益改善額÷初期投資額」でROIを算出。例えば「初期投資2,000万円に対し、年間3,000万円の収益改善効果」といった形で具体的に提示することで、金融機関の理解を得やすくなります。日本政策金融公庫の審査では、3年以内の投資回収計画が高評価を得る傾向があります。

また、説得力を高めるには「段階的導入計画」と「KPI設定」が効果的です。全社一斉のDX導入ではなく、「第1フェーズで基幹システム刷新(6ヶ月)→第2フェーズでデータ分析基盤構築(4ヶ月)」など、明確な工程表と各段階での効果測定指標(KPI)を設定することで、金融機関も進捗管理がしやすくなります。

最後に、DX推進による「間接的効果」も数値化しましょう。従業員満足度向上による離職率低下(採用コスト削減)や、リモートワーク導入によるオフィス縮小(賃料削減)なども、具体的な金額として提示できれば、総合的な収益改善効果としてアピールできます。

金融機関との交渉では、これらの数値を「事業再生計画書」として体系的にまとめ、過去3年間の実績と比較しながら、DX導入後の5年間の収支計画を月次ベースで作成することが理想的です。具体的な数字に裏打ちされた計画であれば、金融機関も前向きな融資判断をしやすくなるでしょう。

5. 事業再生におけるDX投資の費用対効果:金融機関が評価する根拠データの作り方

事業再生計画において金融機関を納得させるには、DX投資の費用対効果を明確に示すことが不可欠です。単に「デジタル化します」では評価されず、投資額に対する具体的なリターンを数値化する必要があります。

まず重要なのは、投資前の現状分析です。業務プロセスごとの工数とコストを可視化し、非効率な部分を特定します。例えば、受発注業務に月間100時間を要しているなら、その人件費換算額と、DX導入後の予測削減時間を対比させます。メガバンクの審査担当者によれば「3年以内のROI(投資収益率)が明示された計画が高評価される」とのことです。

次に、業界ベンチマークとの比較データを盛り込みましょう。日本生産性本部や業界団体が公表している生産性指標と自社の数値を比較し、DX導入後にどの程度改善するかを示します。例えば小売業であれば、従業員一人当たり売上高が業界平均より20%低い現状から、在庫管理システム導入で10%改善するといった具体的な数値目標が説得力を持ちます。

さらに、段階的な投資計画も評価ポイントです。全てを一度に投資するのではなく、例えば「第1フェーズは基幹システム刷新で投資回収2年、第2フェーズは顧客データ分析基盤構築で投資回収3年」など、リスクを分散した計画が望ましいとされています。

最後に、非財務的効果も定量化しましょう。顧客満足度向上や従業員の働き方改革などは、アンケート結果の数値化やNPS(顧客推奨度)の改善目標として表現できます。みずほ銀行の企業再生支援部門の調査によれば、こうした指標も含めた総合的な投資効果を示せた企業の融資承認率は約40%高いというデータもあります。

金融機関は、単なる思い付きではなく、綿密なデータに基づいたDX投資計画を高く評価します。定量的な根拠に基づく計画立案が、事業再生における資金調達の成否を左右するのです。

【監修者】ブルーリーフパートナーズ
代表取締役 小泉 誉幸

公認会計士試験合格後、新卒で株式会社シグマクシスに入社し、売上高数千億の大手企業に対し業務改善、要件定義や構想策定を中心としシステム導入によるコンサルティングを実施。その後、中堅中小企業の事業再生を主業務としているロングブラックパートナーズ株式会社にて財務DD、事業DD、再生計画の立案、損益改善施策検討に従事。ブルーリーフパートナーズ株式会社設立後は加え税理士法人含む全社の事業推進を実施。
・慶應義塾大学大学院商学研究科修了

事業が厳しいと感じたら、早めの決断が重要です。
最適な再生戦略を一緒に考え、実行に移しましょう。