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2025年07月22日

廃業という勇気ある決断 – 実行支援型コンサルが語る成功事例

事業再生

「廃業」という言葉に、ネガティブなイメージを持つ方が多いのではないでしょうか。しかし実際には、廃業は経営者にとって新たな道を切り開く勇気ある選択となり得るものです。私は実行支援型コンサルタントとして、数多くの中小企業の経営判断に関わってきましたが、時に「続けること」よりも「潔く終わらせること」が経営者自身の幸せや社会的価値を高めることがあります。

本記事では、廃業を「失敗」ではなく「戦略的な決断」として捉え直し、実際に廃業を選んだ後に新たな成功を収めた経営者の実例や、年商3億円という一見成功している会社が廃業を選んだ理由、そして廃業時に知っておくべき税金対策まで、具体的にお伝えします。

「このまま続けるべきか」「いつ決断すべきか」と悩んでいる経営者の方、または将来の選択肢として廃業を考えている方にとって、道標となる情報をご提供できれば幸いです。

1. 【現役コンサルタントが解説】廃業は失敗ではない!後悔しない「幸せな撤退」の実例5選

「廃業」という言葉には、ネガティブなイメージがつきまといます。しかし実際は、廃業こそが経営者にとって最も勇気ある決断となるケースも少なくありません。長年の経営コンサルティング現場で見てきた「幸せな撤退」の実例をご紹介します。

■実例1:老舗和菓子店の決断
創業60年を誇る関西の老舗和菓子店は、後継者不在に悩んでいました。売上は安定していましたが、オーナーは70代。複数の買収オファーがあったものの、自分の代で「良い形で終わらせたい」と決断。最後の1年間は「ラストイヤー感謝祭」として客足が殺到。メディアにも取り上げられ、過去最高の売上を記録して有終の美を飾りました。現在オーナーは趣味の陶芸に没頭し、「肩の荷が下りた」と晴れやかな表情です。

■実例2:IT企業経営者の第二の人生
急成長したシステム開発会社を経営していた40代の社長。技術の急速な変化に対応するための投資負担と健康問題から、会社存続に不安を感じていました。慎重に検討した結果、好条件での事業譲渡を実現。従業員の雇用も守られ、本人は得意分野を活かして教育者として新たなキャリアをスタート。「経営の重圧から解放され、本当にやりたいことに集中できるようになった」と語っています。

■実例3:飲食店の英断
人気エリアで10年間レストランを経営してきた夫婦。家賃高騰や人手不足に悩まされ、働き詰めの日々を送っていました。収益はあるものの、家族との時間も取れず疲労困憊の状態。早期に廃業を決断し、資産を残した状態で撤退。その後、夫は料理教室を開設、妻はウェブデザインの仕事を始め、双方が適切なワークライフバランスを実現しています。

■実例4:製造業からコンサルタントへ
金属加工の町工場を営んでいた50代男性。大手メーカーの海外移転により受注が激減。しかし蓄積した技術ノウハウを活かし、廃業を前向きに捉え、製造業向けコンサルタントへ転身。現在は複数の中小企業の技術アドバイザーとして活躍し、「会社を閉じる決断があったからこそ、今の充実した仕事がある」と話しています。

■実例5:アパレル店舗のオンライン転換
地方都市でアパレルショップを営んでいた女性経営者。インターネット通販の台頭で客足が減少。実店舗を閉鎖する代わりに、自社ECサイトを立ち上げ事業形態を転換。家賃や人件費が大幅に削減され、むしろ利益率は向上。「店舗という形態にこだわらなかったことで、事業としては成長できた」と語ります。

廃業は決して「負け」ではありません。むしろ、新たなスタートを切るための重要な決断といえるでしょう。これらの実例に共通するのは、①早期決断、②計画的な撤退、③資産の保全、④次のステップへの展望、⑤周囲への配慮です。事業継続に固執するあまり、すべてを失うケースも少なくありません。時には「辞める勇気」こそが、経営者として最も重要な判断力なのかもしれません。

2. 年商3億円の会社が選んだ「廃業」という選択 – 経営者が語る決断の裏側と新たな人生

「売上は3億円あったのに、なぜ廃業したのですか?」

これは、長年運営してきた製造業を畳むことを決断した佐藤社長(仮名)によく投げかけられる質問です。一般的に「廃業」というと失敗のイメージがありますが、佐藤社長の場合は違いました。

「実は廃業は失敗ではなく、新たな選択肢でした」と佐藤社長は穏やかな表情で語ります。愛知県で工業部品を製造する会社を20年間経営してきた佐藤社長。年商3億円、従業員30名を抱える中小企業でしたが、市場環境の変化と後継者問題に直面していました。

「海外製品との価格競争が激しくなり、利益率は年々下がっていました。同時に、子どもたちは別のキャリアを選び、社内にも経営を任せられる人材がいませんでした」

佐藤社長が最初に考えたのはM&Aでした。しかし、自社の技術や従業員の雇用を守れる条件での売却先が見つからなかったのです。そこで選んだのが計画的な「廃業」という道でした。

「廃業を決めた後、まず従業員のキャリア支援に2年間かけました。取引先企業への紹介や、再就職支援など。全員が新たな職場を見つけてくれたことが最大の安心でした」

同時に、取引先への影響を最小限に抑えるため、代替となる協力会社の紹介も行いました。このような丁寧な引継ぎ期間を設けたことで、取引先からも感謝の言葉をもらったといいます。

「財務的には在庫や設備の処分、退職金の支払いなど約1億円の費用がかかりましたが、計画的に進めたため借金を残すことなく廃業できました」

廃業後、佐藤社長は長年の経験を活かし、中小企業向けのコンサルタントとして活動を始めました。特に事業承継や廃業を検討する経営者へのアドバイザーとして高い評価を得ています。

「私の経験から言えることは、廃業は『負け』ではないということ。時には撤退することが次の挑戦への第一歩になります。大切なのは、関わる全ての人に配慮した出口戦略を立てること。そうすれば、廃業も人生における立派な選択肢になり得るのです」

佐藤社長の事例は、ビジネスの終わり方にも「成功」があることを示しています。計画的な廃業によって、従業員、取引先、そして経営者自身が新たなステージへと進むことができた好例と言えるでしょう。

経営コンサルタントの田中氏(仮名)は「廃業の9割は突然の倒産や借金を抱えた閉鎖です。佐藤社長のような計画的廃業は極めて稀で、多くの経営者が学ぶべき事例です」と評価しています。

人生100年時代。ビジネスにも終わりがあり、その先に新たな挑戦が待っています。廃業という選択肢を、失敗ではなく次への戦略的な一手と捉える視点が、これからの経営者には求められているのかもしれません。

3. 廃業コストの真実:知らないと損する税金対策と身軽に再スタートする方法

廃業には多くのコストがかかると思われがちですが、適切な計画と対策を立てれば、そのコストを最小限に抑えることが可能です。廃業時の税金対策は特に重要で、多くの経営者が見落としがちな点でもあります。

まず廃業時に直面する主な税金は、法人税・所得税・消費税・固定資産税です。特に注目すべきは「準備金」や「引当金」の取り扱いです。廃業時にこれらが一度に益金算入されることで、想定外の税負担が生じるケースが少なくありません。

実際に某飲食チェーンの経営者Aさんは、税理士と連携して廃業の2年前から計画的に準備金を取り崩し、税負担を分散させることで、最終的な廃業コストを当初見積もりの60%程度に抑えることができました。

また、在庫や固定資産の処分方法も重要です。単に廃棄するのではなく、適切な評価減や売却タイミングを見極めることで、税務上のメリットを最大化できます。東京都内の小売業Bさんは、廃業前に在庫を段階的にセール販売し、残った商品を取引先に買い取ってもらうことで、廃棄コストを大幅に削減しました。

従業員への対応も廃業コストを左右します。退職金の支払いは大きな負担となりますが、計画的に退職金引当金を積み立てておくことで、資金繰りの悪化を防げます。また、早期の情報共有と再就職支援を行うことで、従業員との信頼関係を維持しながら円滑な廃業を実現できた事例も多数あります。

さらに見落としがちなのが、廃業後の身軽な再スタートのための準備です。個人保証している借入金の整理や、クレジットヒストリーの回復計画を立てておくことが重要です。京都の老舗旅館の元経営者は、廃業後2年で新たな事業を立ち上げましたが、事前に金融機関と緻密な債務整理プランを策定していたことが、スムーズな再出発につながりました。

廃業税制の特例も積極的に活用すべきです。例えば「小規模企業共済」の加入者は、廃業時に共済金を受け取る際の税制優遇が受けられます。また「事業再生税制」を利用することで、債務免除益に対する課税の特例措置が適用される可能性もあります。

最後に忘れてはならないのが、廃業手続きの適切な実行です。法人の場合、清算結了までの期間をできるだけ短くすることで、決算や税務申告などの事務コストを削減できます。税理士や弁護士などの専門家と連携し、効率的な手続きを進めることが重要です。

廃業は終わりではなく新たな始まりです。適切なコスト管理と税金対策を行うことで、次のステージへ身軽に踏み出すことができるのです。

【監修者】ブルーリーフパートナーズ
代表取締役 小泉 誉幸

公認会計士試験合格後、新卒で株式会社シグマクシスに入社し、売上高数千億の大手企業に対し業務改善、要件定義や構想策定を中心としシステム導入によるコンサルティングを実施。その後、中堅中小企業の事業再生を主業務としているロングブラックパートナーズ株式会社にて財務DD、事業DD、再生計画の立案、損益改善施策検討に従事。ブルーリーフパートナーズ株式会社設立後は加え税理士法人含む全社の事業推進を実施。
・慶應義塾大学大学院商学研究科修了

事業が厳しいと感じたら、早めの決断が重要です。
最適な再生戦略を一緒に考え、実行に移しましょう。