危機を乗り越えた社長に学ぶ 銀行リスケ交渉成功術

資金繰りの悪化は、経営者にとって最も恐れるべき危機の一つです。特に銀行からの融資返済が困難になった場合、リスケジュール(以下、リスケ)交渉は避けて通れません。しかし、この交渉を成功させることで、企業は再生への道を歩み始めることができます。本記事では、実際に銀行とのリスケ交渉を成功させ、会社を立て直した経営者たちの体験から、効果的なリスケ交渉の方法を解説します。
リスケ交渉とは何か
リスケジュールとは、返済条件の変更を意味します。具体的には、毎月の返済額の減額や返済期間の延長などが含まれます。銀行にとっては貸倒れを防ぐ手段であり、企業にとっては資金繰りを改善し、事業継続の可能性を高める重要な機会です。
成功事例:製造業A社の場合
金属加工を専門とするA社は、大口取引先の倒産により急速に資金繰りが悪化しました。月商1億円から半減し、銀行融資の返済が困難になりました。
A社の社長が行った成功のポイント:
1. 問題を早期に認識し、銀行に自ら相談
2. 詳細な資金繰り表と経営改善計画を作成
3. 社内コスト削減を先行して実施し、姿勢を示した
銀行側も、A社の誠実な対応と具体的な改善策を評価。3年間の元金返済猶予と金利のみの支払いに合意しました。その後、A社は新規顧客獲得に成功し、現在は当初の計画を上回るペースで返済を進めています。
リスケ交渉の5つの鉄則
1. 早期相談が鍵
問題が深刻化する前に銀行に相談することが重要です。日本政策金融公庫の調査によれば、資金繰り悪化を3か月以内に銀行に相談した企業のリスケ成功率は約70%、6か月以上経過してからの相談では約30%まで低下します。
2. 徹底した情報開示
隠し事は絶対にNG。以下の資料は必ず準備しましょう:
– 直近3年分の決算書
– 詳細な資金繰り表(最低6か月分)
– 借入金の返済予定表
– 売掛金・買掛金の明細
– 在庫状況
3. 具体的で実現可能な改善計画
実行可能な経営改善計画を提示することが不可欠です。計画には以下を含めましょう:
– 現状分析と問題点の明確化
– 具体的な改善策と数値目標
– 月次での進捗確認方法
– 責任者の明確化
4. 経営者自身の覚悟を示す
リスケ交渉で最も重要なのは経営者の姿勢です。以下の点を明確に示しましょう:
– 役員報酬のカット
– 個人資産の提供(不動産の担保提供など)
– 経費削減の先行実施
– 新規事業開発への取り組み
5. 専門家の活用
中小企業診断士や金融機関出身のコンサルタントなど、リスケ交渉に精通した専門家のサポートを受けることで、成功率が大幅に向上します。特に以下の機関の活用を検討しましょう:
– 中小企業再生支援協議会
– 認定支援機関(税理士、公認会計士など)
– 地域の産業支援センター
交渉時の注意点
言ってはいけない3つのフレーズ
1. 「いつか必ず返します」:具体性のない約束は信頼を損ねます
2. 「他行なら融資してくれる」:脅しと受け取られる可能性があります
3. 「景気が回復すれば大丈夫」:外部要因に依存する姿勢は評価されません
銀行担当者の心理を理解する
銀行担当者も組織の一員。彼らが上司や審査部に説明できる材料を提供することが重要です。数字だけでなく、経営者としての熱意や誠実さも伝えましょう。
リスケ後の展開:IT商社B社の復活劇
IT機器販売のB社は、業績悪化により3年間のリスケを実施。この期間を活用して以下の改革を実行しました:
1. 低収益商品の取扱い中止と高収益サービス部門の強化
2. 人員の適正配置と成果主義の導入
3. 役員報酬の50%カット継続
4. 月次での銀行への報告会実施
結果として、リスケ3年目には営業利益率が1.2%から4.8%に改善。予定より1年早くリスケを終了し、現在は通常返済に戻っています。
まとめ
銀行とのリスケ交渉は、企業存続の危機に直面したときの重要な選択肢です。成功の鍵は以下の点にあります:
1. 問題の早期認識と迅速な相談
2. 透明性の高い情報開示
3. 実行可能な改善計画の提示
4. 経営者自身の姿勢と覚悟
5. 専門家の適切な活用
リスケは企業にとって単なる延命措置ではなく、事業再生の大きな機会です。この機会を最大限に活かすためには、銀行との信頼関係構築が不可欠であり、それは誠実なコミュニケーションから始まります。危機を乗り越え、さらに強い企業へと成長するためのステップとして、リスケ交渉を前向きに捉えましょう。
【監修者】ブルーリーフパートナーズ
代表取締役 小泉 誉幸
公認会計士試験合格後、新卒で株式会社シグマクシスに入社し、売上高数千億の大手企業に対し業務改善、要件定義や構想策定を中心としシステム導入によるコンサルティングを実施。その後、中堅中小企業の事業再生を主業務としているロングブラックパートナーズ株式会社にて財務DD、事業DD、再生計画の立案、損益改善施策検討に従事。ブルーリーフパートナーズ株式会社設立後は加え税理士法人含む全社の事業推進を実施。
・慶應義塾大学大学院商学研究科修了