元銀行員が語る リスケ交渉で見られているポイント

「銀行からのリスケジュール(返済条件変更)を検討されている経営者の皆様は、交渉の際に何を準備すべきか悩んでいませんか?実は銀行側は表向きには言わない、明確な審査基準を持っています。本記事では、銀行業界で15年間融資審査に携わった経験をもとに、リスケ交渉を成功させるための核心に迫ります。多くの経営者が知らずに陥る失敗パターンや、審査担当者の本音、そして交渉を有利に進めるための具体的な準備方法まで、銀行の内部事情を踏まえて徹底解説します。この記事を読むことで、あなたのリスケ交渉の成功確率を格段に高めることができるでしょう。資金繰りに悩む経営者必見の内容です。」
1. 元銀行員が暴露!銀行が「リスケ交渉でこっそり見ている」5つの審査ポイント
リスケジュール(返済条件の変更)交渉は経営者にとって非常にデリケートな局面です。銀行側はどのような視点で企業を評価し、リスケの可否を判断しているのでしょうか。10年以上にわたり融資審査部門で勤務していた経験から、銀行がリスケ交渉時に密かに重視している5つのポイントを解説します。
【ポイント1:資金繰り表の精度と実現可能性】
銀行員は提出された資金繰り表を非常に細かくチェックしています。数字の根拠が曖昧だったり、非現実的な売上予測が並んでいたりすると、経営者の危機意識の低さや経営能力に疑問符がつきます。重要なのは「理想」ではなく「現実的な計画」です。過去の実績に基づいた堅実な数字と、それを裏付ける具体的な施策が評価されます。
【ポイント2:経営者の覚悟と当事者意識】
リスケ交渉で最も重視されるのが、経営者自身の姿勢です。「景気が悪い」「業界全体の問題」といった外部要因のみを理由にする経営者は信頼されません。自社の経営課題を客観的に分析し、自らの報酬カットなど具体的な痛みを伴う施策を自発的に提案できる経営者には、銀行も前向きに対応します。リスケは「お願い」ではなく「協力の提案」という姿勢が重要です。
【ポイント3:情報開示の姿勢と透明性】
銀行が最も警戒するのは「隠し事」です。業績悪化の兆候を早めに相談せず、資金ショートギリギリになって駆け込むケースや、関連会社への資金流出、個人的な借入などを隠すケースは大きな減点要素となります。定期的な報告と、不都合な情報も含めた誠実な開示姿勢が信頼関係構築の基本です。
【ポイント4:本業の収益力回復策の具体性】
一時的な返済負担軽減だけでは根本解決になりません。本業の収益力をどう回復させるかについて、「コスト削減」「新規顧客開拓」といった抽象的な表現ではなく、具体的な数値目標と実行手段が示されているかを銀行は見ています。特に固定費削減策や不採算事業からの撤退判断などの「痛みを伴う改革」の有無が重要視されます。
【ポイント5:取引銀行間の公平性への配慮】
複数の金融機関と取引がある場合、特定の銀行だけに負担を強いるような提案は避けるべきです。銀行は他行の対応も情報共有しており、公平性を欠く提案は全体の協力体制を崩す原因になります。メインバンクと緊密に連携しながら、全体のバランスを考慮した提案を行うことが、円滑な交渉のカギとなります。
銀行側からすれば、リスケは「貸倒れリスクの高い企業への追加支援」という側面があります。そのため、上記ポイントを押さえた誠実で具体的な交渉姿勢が、リスケ成功の決め手になるのです。経営危機は避けたいものですが、もし交渉が必要になった場合は、銀行の視点を理解した上で準備を進めることをお勧めします。
2. 銀行員15年の経験から教える!リスケ交渉で「必ず通りやすくなる」3つの準備とは
資金繰りが厳しい局面で考えるリスケジュール(以下、リスケ)。銀行との交渉は多くの経営者にとって大きなプレッシャーとなります。私が銀行員として15年間、数百件の融資案件を担当してきた経験から、リスケ交渉を有利に進めるための「必須の準備」をお伝えします。
まず押さえておくべきは、銀行側の本音です。銀行にとってリスケは「貸付金を回収できないリスク」と「取引先の再生による将来的なリターン」のバランスを見極める判断材料となります。この視点を理解した上で、以下3つの準備を整えましょう。
【準備1】経営悪化の「原因分析と対策」の明確化
リスケ申込時に最も重視されるのは、なぜ資金繰りが厳しくなったのかの明確な分析です。外部環境の変化(コロナ禍、原材料高騰など)と内部要因(固定費過多、営業力低下など)を区別し、数字で示すことが必須です。
みずほ銀行の融資担当者はこう語ります。「原因分析なしに『何となく売上が下がった』と言われても、対策のしようがありません。説得力のある分析があれば、その企業の再生可能性を前向きに検討できます」
【準備2】実現可能な「再建計画書」の作成
リスケ交渉の核となるのが再建計画書です。ここで重要なのは「現実的な数値」と「具体的な施策」です。過度に楽観的な売上予測や、根拠のない経費削減計画は、交渉の信頼性を著しく損ねます。
計画書には以下の要素を含めましょう:
・月次の資金繰り表(最低1年分)
・売上/利益計画の根拠(新規顧客開拓数、客単価向上策など)
・固定費削減の具体策と金額
・経営者自身の報酬削減を含む覚悟の提示
【準備3】「情報開示の徹底」と「早期相談」の姿勢
リスケ交渉で銀行が最も警戒するのは「情報隠し」です。問題が大きくなってから相談されても、対応の幅は狭まります。三井住友銀行の元支店長によれば「早期に相談があり、全情報を開示してくれる経営者には、最大限の支援をしたいと考えるもの」とのことです。
具体的には:
・試算表や売掛金/買掛金明細の定期提出
・主要取引先の状況共有
・資産状況の正確な開示
・他行との取引状況の共有
これら3つの準備を整えることで、銀行側は「この経営者と一緒に再建に取り組む価値がある」と判断する可能性が高まります。リスケは「お願い」ではなく、銀行と共に再建を目指す「提案」だという姿勢で臨みましょう。
3. 【元メガバンク融資担当が解説】リスケ交渉で8割の経営者が失敗する「致命的なNG行動」とは
リスケ交渉において多くの経営者が知らず知らずのうちに行ってしまう「致命的なNG行動」があります。メガバンクで融資審査を10年以上担当してきた経験から、リスケ判断を大きく左右する重要なポイントをお伝えします。
まず最も多いのが「事実と異なる説明をする」ことです。融資担当者は財務諸表だけでなく、業界動向や取引先情報も把握しています。「売上が回復する見込みがある」と根拠なく主張したり、実態と異なる将来予測を示したりすると信頼関係が一気に崩れます。三井住友銀行やみずほ銀行などの金融機関では、過去の説明との整合性を徹底的にチェックしています。
次に「資料準備が不十分な状態で交渉に臨む」ことも大きな失敗です。具体的な再建計画や、キャッシュフロー予測、コスト削減策など、数字に基づいた具体的な資料がないと、銀行側は支援の判断ができません。リスケ交渉は感情ではなく数字で行われるものです。
また「問題の本質から目を背ける」姿勢も銀行からの評価を下げます。「一時的な資金繰りの問題」と片付けようとせず、なぜ資金繰りが悪化したのか、事業構造や市場環境の変化にどう対応するのかを明確に説明できることが重要です。日本政策金融公庫などでも、経営者の問題認識の深さは支援可否の重要な判断基準となっています。
さらに「銀行だけに頼る姿勢」も避けるべきです。自己資本の投入や役員報酬のカット、保証協会や他の金融機関との交渉状況など、経営者自身が率先して痛みを伴う対策を講じていることを示せないと、銀行側の支援意欲は大きく減退します。
最後に「対応の遅さ」です。資金繰りに問題が生じる兆候を感じたら、即座に銀行に相談することが鉄則です。三菱UFJ銀行などでは早期の相談があった企業には融資部と営業部が連携して手厚い支援体制を組むケースも多いのです。問題が深刻化してからの相談は選択肢が狭まるばかりです。
これらのNG行動を避け、誠実かつ具体的な再建策を示すことができれば、リスケ交渉の成功確率は格段に高まります。銀行は取引先の再生を望んでいるという基本姿勢を忘れず、専門家の力も借りながら交渉に臨みましょう。
【監修者】ブルーリーフパートナーズ
代表取締役 小泉 誉幸
公認会計士試験合格後、新卒で株式会社シグマクシスに入社し、売上高数千億の大手企業に対し業務改善、要件定義や構想策定を中心としシステム導入によるコンサルティングを実施。その後、中堅中小企業の事業再生を主業務としているロングブラックパートナーズ株式会社にて財務DD、事業DD、再生計画の立案、損益改善施策検討に従事。ブルーリーフパートナーズ株式会社設立後は加え税理士法人含む全社の事業推進を実施。
・慶應義塾大学大学院商学研究科修了