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2026年02月19日

不採算事業を抱える経営者必見|眠っている経営資源を活かす事業再生術

事業再生

昨今の急激な市場環境の変化により、主力事業は堅調であるものの、特定の不採算事業が経営全体の利益を圧迫しているというお悩みをお持ちではないでしょうか。「もう少し様子を見れば好転するかもしれない」という期待から、抜本的な対策や決断を先送りにしてしまうケースは少なくありません。しかし、赤字部門を放置することは、単に収益性を損なうだけでなく、企業全体の資金繰りや成長スピードを鈍化させる重大なリスクを孕んでいます。

一方で、不採算事業=撤退だけが唯一の解決策ではありません。一見すると重荷に感じる事業の中にも、他社にはない技術、顧客基盤、ノウハウといった「見えない資産」が眠っていることが多くあります。これらを見落とされている経営資源として再定義し、適切に活用することで、事業を再生させ、新たな収益の柱へと変革することも十分に可能です。

本記事では、不採算事業を抱える経営者様に向けて、リスクの早期発見から現状分析、社内資源を活かした具体的な再生ステップについて詳しく解説します。また、自社単独での改善が困難な場合に検討すべきM&Aや事業譲渡という選択肢についても触れていきます。ピンチをチャンスに変え、企業の永続的な成長を実現するために、今まさに経営者が下すべき決断の一助となれば幸いです。

1. 赤字事業を放置するリスクとは?早期発見と現状分析の重要性

経営者にとって、手塩にかけて育てた事業が赤字に転落している事実を直視することは、精神的に大きな苦痛を伴います。「もう少し耐えれば市場が好転するはずだ」「長年の取引先との関係があるから撤退できない」といった感情的な判断や希望的観測が、不採算事業の整理を遅らせる最大の要因です。しかし、赤字事業を放置するリスクは、単にその部門の損失にとどまりません。企業全体の存続を揺るがす深刻な事態へと発展する可能性があります。

最大のリスクは、会社全体の資金繰り(キャッシュフロー)の悪化です。不採算事業は、いわば「止血されていない傷口」です。健全な部門が稼ぎ出した利益や、虎の子の内部留保が、赤字部門の穴埋めに使われ続けることになります。これにより、本来であれば成長分野に投資すべき経営資源が浪費され、会社全体の競争力が低下するという負のスパイラルに陥ります。さらに、金融機関からの信用格付けが低下し、いざという時の融資が受けられなくなる恐れもあります。

また、組織風土への悪影響も見逃せません。赤字部門が放置されている状況は、利益を出している部門の従業員にとってモチベーション低下の要因となります。「自分たちが稼いだ金が、成果の出ない事業に消えている」という不公平感が蔓延すれば、優秀な人材の離職を招きかねません。

こうした事態を防ぐために不可欠なのが、問題の早期発見と客観的な現状分析です。どんぶり勘定での経営を脱却し、部門別会計を徹底することで、どの事業が真に利益を生み、どの事業が足を引っ張っているかを可視化する必要があります。

現状分析においては、数値上の赤字額だけでなく、その要因を深く掘り下げることが重要です。それが一過性の外部要因によるものなのか、それともビジネスモデル自体が寿命を迎えている構造的な問題なのかを見極めます。例えば、貢献利益(売上高から変動費を引いたもの)がプラスであれば、固定費の削減で再生の余地があるかもしれません。しかし、貢献利益すらマイナスであれば、事業の抜本的な見直しや撤退が急務となります。

傷が浅いうちに正確な診断を下し、迅速な意思決定を行うことこそが、経営者の最重要責務です。感情を排し、冷徹な数字に基づいて現状を把握することが、事業再生への第一歩となります。

2. 社内に眠る「見えない資産」を活用して収益構造を改善する方法

不採算事業からの脱却を目指す際、多くの経営者はコストカットや人員削減といった「止血」に目を向けがちです。しかし、事業再生の鍵は、財務諸表(B/S)には計上されない「見えない資産(無形資産)」の再評価と有効活用にあります。社内に埋没している強みを掘り起こし、キャッシュフローを生むエンジンへと転換させる具体的なアプローチについて解説します。

まず着目すべきは「顧客データと信頼関係」という資産です。売上が低迷している事業であっても、そこには長年培ってきた顧客リストや取引先とのネットワークが存在します。単に過去の取引履歴として眠らせておくのではなく、顧客属性や購買行動を分析し、別事業の商材をクロスセルしたり、休眠顧客へ新たな提案を行ったりすることで、新規獲得コストをかけずに収益を上げることが可能です。特に、長年の取引に基づく「信用」は、他社が容易に模倣できない強力な参入障壁となります。

次に、「業務プロセスとノウハウ」の形式知化も重要です。社内では当たり前に行われている業務フローや独自の技術、教育システムなどが、実は他社にとって喉から手が出るほど欲しいノウハウであるケースは珍しくありません。例えば、製造業における品質管理システムや、物流業における配送効率化の仕組みなどをパッケージ化し、コンサルティングやシステム提供という形で外販することで、新たな収益源を確保できます。自社のバックオフィス機能をシェアードサービスとして他社に提供することも一つの手段です。

さらに、「従業員のスキルと知見」の再配置も欠かせません。不採算部門に所属している人材の中には、営業力や技術力、特定の業界知識に秀でた社員が含まれている可能性があります。全社的なスキルマップを作成し、成長事業や新規プロジェクトへ適材適所で配置転換を行うことは、モチベーションの向上とともに生産性を劇的に改善させます。

これらの見えない資産を活用するためには、まず社内の全部署を対象に「資産の棚卸し」を行うことから始めてください。財務数値には表れない強みを言語化し、市場のニーズと照らし合わせることで、既存の経営資源を活かした低リスクかつ高リターンの事業再生プランを描くことができるでしょう。追加投資を最小限に抑えながら収益構造を抜本的に改善することは、決して不可能ではありません。

3. コスト削減か売上増か?事業再生を成功させる具体的なステップ

不採算事業の再生において、経営者が最も頭を悩ませるのが「まずはコストを削減すべきか、それとも売上を伸ばしてカバーすべきか」という優先順位の判断です。結論から言えば、事業再生のフェーズにおいては「短期間での徹底的なコスト削減(止血)」を最優先し、キャッシュフローが安定した段階で「売上拡大(再成長)」へシフトするのが鉄則です。

ここでは、事業をV字回復させるための具体的なステップを解説します。

ステップ1:現状把握とキャッシュフローの確保**

何よりも先に行うべきは、正確な現状分析です。損益計算書(P/L)上の赤字額だけでなく、貸借対照表(B/S)やキャッシュフロー計算書を精査し、「あと何ヶ月資金が持つか」を把握します。事業再生は時間との戦いです。まずは手元の現金を確保するため、遊休資産の売却や在庫の現金化、債権回収の徹底を行い、再生に必要な時間を買わなければなりません。

ステップ2:固定費の削減による損益分岐点の引き下げ**

売上を急激に伸ばすことは外部要因に左右されやすく困難ですが、コスト削減は自社の意思決定だけで確実に実行可能です。まずは固定費を見直しましょう。

* オフィス賃料の適正化:リモートワークの活用や、より安価な物件への移転。
* 外注費・顧問料の見直し:費用対効果が見合わない契約の解除。
* 不採算店舗・部門の撤退:将来性のない領域からの早期撤退。

この段階で重要なのは、「聖域を設けない」ことですが、同時に「企業のコアコンピタンス(競争力の源泉)」を誤って削らないよう注意が必要です。サービスの質を著しく低下させるコストカットは、後の売上回復を不可能にします。

ステップ3:変動費のコントロールと粗利益率の改善**

固定費の次は変動費です。仕入れ単価の交渉、物流コストの最適化、広告宣伝費の効率化(CPAの改善)を進めます。単に経費を減らすだけでなく、商品やサービスの単価を見直し、適正価格へ値上げすることも検討すべきです。不採算事業は得てして安売り競争に陥っているケースが多く見られます。付加価値を見直し、粗利益率を高めることで、少ない売上でも利益が出る体質(筋肉質な経営体質)へと変革します。

ステップ4:既存顧客・資産を活用した売上拡大**

コスト構造が改善され、損益分岐点が下がった段階で初めて、アクセルを踏み込みます。この際、新規顧客の獲得よりも、既存顧客へのアプローチを優先します。既存顧客は獲得コストが低く、LTV(顧客生涯価値)の向上が見込めるからです。また、自社に眠っている「活用されていない経営資源」がないか再確認してください。例えば、自社の顧客リストを活用したクロスセルや、工場の空き稼働時間の活用、ノウハウの外販などが考えられます。

事業再生は、闇雲に動いても傷口を広げるだけです。まずは止血し、体力を回復させ、その上で攻めに転じるという順序を間違えないことが、成功への最短ルートとなります。

4. 自社での再生が難しい場合に検討すべきM&Aや事業譲渡の可能性

経営者にとって、手塩にかけて育ててきた事業の一部を手放すという決断は、心理的に非常に大きなハードルとなるものです。しかし、どれほどコスト削減や業務効率化を進めても収益構造が改善しない場合や、市場環境の劇的な変化により自社単独での浮上が困難な場合は、外部のリソースを活用した抜本的な対策が必要になります。そこで有力な選択肢となるのが、M&A(合併・買収)や事業譲渡です。

多くの経営者は「赤字の事業を買ってくれる相手などいない」と考えがちですが、それは誤解です。買い手企業は単なる現在の損益だけでなく、その事業が持つ「潜在的な価値」を評価します。例えば、熟練した技術を持つ従業員、長年培ってきた顧客リスト、特殊な許認可、あるいは好立地の店舗物件などは、他社にとっては喉から手が出るほど欲しい経営資源となり得ます。自社では不採算であっても、資本力のある大手企業や、隣接業界で事業展開する企業が取得することで、シナジー効果が生まれ、短期間で黒字化するケースは珍しくありません。

事業再生の局面において特に有効なスキームの一つが「事業譲渡」です。これは会社全体を売却するのではなく、特定の不採算部門や、逆に価値のある事業のみを切り出して譲渡する方法です。売り手側のメリットとしては、不採算事業を切り離すことで出血を止め、得られた売却資金を主力事業や成長分野へ集中投資できる点(選択と集中)が挙げられます。これにより、会社全体の財務体質が改善し、倒産リスクを回避できる可能性が高まります。

また、廃業と比較した場合の最大のメリットは、従業員の雇用維持と取引先への責任遂行です。事業を単に閉鎖すれば従業員は解雇せざるを得ませんが、M&Aや事業譲渡であれば、買い手企業に従業員を引き継いでもらう契約を結ぶことが可能です。技術やノウハウが散逸することなく、従業員の生活を守りながら事業を存続させることができるため、地域経済への影響も最小限に抑えられます。

ただし、M&Aや事業譲渡を成功させるためには、資金繰りが完全にショートする前に動き出すことが重要です。企業の基礎体力が残っている段階であれば、交渉において有利な条件を引き出しやすくなります。自社での再生に固執して傷口を広げる前に、M&Aアドバイザーや金融機関などの専門家へ相談し、客観的な企業価値評価(バリュエーション)を受けることが、事業再生への第一歩となります。戦略的な撤退は敗北ではなく、企業を存続させ、再成長させるための英断なのです。

5. 企業の存続と成長のために経営者が今すぐ決断すべきこと

赤字部門を抱えながら経営を続けることは、穴の空いたバケツで水を運び続けるようなものです。どれほど本業が好調でも、不採算事業が利益とキャッシュを流出し続ければ、企業全体の体力を確実に奪っていきます。多くの経営者が「もう少し待てば好転するかもしれない」「これまで投資した資金が無駄になる」というサンクコスト(埋没費用)の呪縛に囚われ、撤退や再編の決断を先送りにしてしまいます。しかし、企業の存続と将来の成長のためには、今この瞬間に感情を排した冷徹な決断を下さなければなりません。

経営者がまず行うべきは、明確な「撤退ライン」の設定です。「半年後に単月黒字化しなければ撤退する」「追加融資が必要になった時点で事業譲渡を検討する」といった具体的な数値基準を設け、それを社内外に宣言することで、退路を断つ覚悟が必要です。曖昧な判断基準のままズルズルと事業を継続することは、結果として従業員の雇用を危険に晒し、取引先や株主への背信行為にもなり得ます。

次に、限られた経営資源の「選択と集中」を断行してください。不採算事業に割いている優秀な人材、資金、時間を、成長が見込める中核事業へ再配分することで、V字回復の可能性は飛躍的に高まります。もし自社での再生が困難であれば、M&Aや事業譲渡(カーブアウト)を通じて、その事業にシナジーを持つ他社へ託すことも立派な経営戦略です。実際に、不採算部門を切り離したことで財務体質が改善し、金融機関からの評価が向上した事例は枚挙にいとまがありません。

最後に、経営者自身のメンタルブロックを解除することです。事業の撤退は「敗北」ではありません。変化する市場環境に適応し、会社全体を生かすための「戦略的転進」です。傷が浅いうちに行動を起こせば、選べる選択肢は多く残されています。しかし、資金繰りがショートしてからでは、法的整理以外の道が閉ざされてしまうこともあります。企業の永続的な発展と社員の生活を守るために、過去の経緯にとらわれず、未来を見据えた勇気ある決断を今すぐ下してください。

【監修者】ブルーリーフパートナーズ
代表取締役 小泉 誉幸

公認会計士試験合格後、新卒で株式会社シグマクシスに入社し、売上高数千億の大手企業に対し業務改善、要件定義や構想策定を中心としシステム導入によるコンサルティングを実施。その後、中堅中小企業の事業再生を主業務としているロングブラックパートナーズ株式会社にて財務DD、事業DD、再生計画の立案、損益改善施策検討に従事。ブルーリーフパートナーズ株式会社設立後は加え税理士法人含む全社の事業推進を実施。
・慶應義塾大学大学院商学研究科修了

事業が厳しいと感じたら、早めの決断が重要です。
最適な再生戦略を一緒に考え、実行に移しましょう。