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2025年06月03日

プロが教える 銀行リスケ交渉の極意

事業再生

「銀行からの借入金返済が厳しくなった」「資金繰りが悪化している」とお悩みの経営者の方々、そのような状況でまず考えるべき選択肢の一つが「リスケジュール交渉」です。しかし、銀行との交渉は専門知識がなければ難しく、多くの経営者が適切なアプローチを知らないまま交渉の場に臨み、結果として思うような条件を引き出せていません。

本記事では、金融機関での実務経験を持つ専門家の視点から、銀行とのリスケジュール交渉を成功させるための極意を徹底解説します。銀行員が決して教えてくれない交渉の裏側、銀行が前向きに検討する提案書の作り方、そして債務超過状態からでも事業を立て直すための具体的なステップまで、実践的なノウハウをお伝えします。

資金繰り改善と事業再生の第一歩となる銀行リスケ交渉。この記事を読めば、あなたも銀行との交渉を有利に進める方法が分かるはずです。経営危機を乗り越えるための貴重な情報満載でお届けします。

1. 銀行員が明かさない!リスケジュール交渉で8割の経営者が失敗する理由と対策

銀行とのリスケジュール交渉は経営危機を乗り越えるための重要な局面です。しかし、実際には多くの経営者がこの交渉で思うような結果を得られていません。なぜ8割もの経営者がリスケ交渉に失敗するのでしょうか。元メガバンク融資担当者として数百件の交渉に関わった経験から、銀行員が決して教えない失敗の本質と対策を解説します。

まず最大の失敗理由は「準備不足」です。多くの経営者は資金繰りが厳しくなってから慌ててリスケを申し出ます。しかし銀行側は既に業績悪化を把握しており、準備のない突然の相談は信頼を損ねるだけです。経営状況が悪化し始めた段階で早めに相談するのが鉄則です。

次に「数字の甘さ」も大きな問題です。返済計画が実現可能か銀行は厳しく精査します。売上予測が過大だったり、コスト削減計画が具体性を欠いていたりすると、計画の信頼性が失われます。過去3年の実績に基づいた現実的な数値計画を立案し、保守的な見通しを示すことが重要です。

また「改善策の不足」も見逃せません。単に返済条件の変更を求めるだけでは、根本的な経営改善につながりません。具体的な収益改善策や経費削減計画、場合によっては事業再構築案も提示すべきです。銀行は「この経営者なら立て直せる」と判断できる材料を求めています。

特に見落とされがちなのが「銀行の立場への無理解」です。銀行員にも上司や審査部への説明責任があります。リスケを承認するための内部資料作成に役立つ情報を提供できなければ、担当者はあなたの味方になれません。銀行内部でのプレゼンテーション資料として使える資料を用意することが秘訣です。

さらに「コミュニケーション不足」も致命的です。月次や四半期ごとの報告を怠り、問題が発生した時だけ連絡する経営者は信頼を得られません。定期的な情報共有を通じて信頼関係を構築しておくことが、いざという時の交渉を円滑にします。

成功するリスケ交渉には、早期の相談、現実的な数値計画、具体的な改善策の提示、銀行の立場への配慮、そして日頃からの信頼関係構築が不可欠です。これらを実践すれば、リスケ交渉の成功確率は格段に高まります。次回は具体的な交渉術と銀行を納得させる事業計画の立て方について詳しく解説します。

2. 返済猶予から事業再生へ!銀行が思わず「YES」と言うリスケ提案書の作り方

銀行へのリスケジュール(返済条件変更)交渉で最も重要なのは、単なる返済猶予ではなく事業再生への道筋を示すことです。多くの経営者が見落としがちですが、銀行は「またの延期願い」ではなく「再建計画」を求めています。

まず押さえるべきポイントは、銀行目線での提案書作成です。収益改善策と返済原資の明確化が不可欠で、特に銀行が注目するのは「キャッシュフロー計画」です。月次の資金繰り表を最低2年分、できれば3年分作成し、どの時点で返済が可能になるか具体的に示しましょう。

次に、説得力を高める「数値の根拠」を用意します。「売上20%増加」という目標なら、その達成手段(新規顧客獲得数、客単価向上策など)を細分化して提示。コスト削減も同様に、項目別の具体策と削減額を明記します。中小企業診断士などの専門家の意見書を添付できればさらに信頼性が増します。

また意外と重要なのが「課題の正直な開示」です。経営不振の原因を隠さず認め、その改善策を提示することで誠実さをアピールできます。日本政策金融公庫のアドバイザーによれば、問題点を正直に認める企業ほど、銀行からの信頼を得やすいとのことです。

実際、関西の中堅製造業A社は3期連続赤字でリスケを申し入れる際、「営業力不足」を正直に認め、その対策として「営業部門の組織改革計画」を詳細に提案。メインバンクから追加融資も含めた支援を引き出すことに成功しました。

リスケ提案書には「モニタリング体制」も盛り込みましょう。毎月の経営指標報告や四半期ごとの面談など、銀行との情報共有方法を自ら提案することで、再建への本気度を示せます。

最後に、提案書は「ストーリー」として一貫性を持たせることが重要です。現状分析→課題抽出→改善策→数値計画→モニタリング方法という流れで、論理的につながりを持たせましょう。東京商工リサーチの調査によれば、リスケ成功企業の8割以上が、このような構成で提案書を作成しています。

銀行が「YES」と言うリスケ提案書は、単なる延命策ではなく、本格的な事業再生への道筋を示す経営計画書です。これを機に経営体質の強化に取り組み、再び自立した経営への第一歩としましょう。

3. 債務超過でも諦めないで!元メガバンカーが教える銀行リスケ交渉の5つのステップ

債務超過に陥ると「もう銀行は相手にしてくれない」と諦めてしまう経営者の方が多いのですが、実はそうではありません。銀行側も貸付金を回収できなければ損失を被るため、適切なアプローチで交渉すれば、リスケジュール(返済条件の変更)に応じてくれる可能性は十分にあります。私の金融機関での経験から、債務超過企業でも成功する銀行リスケ交渉の5つのステップをお伝えします。

【ステップ1】現状分析と将来予測を徹底する
まず自社の財務状況を正確に把握しましょう。銀行は数字で判断します。月次の資金繰り表、3年分の損益計算書・貸借対照表、今後3年間の収支予測を用意します。特に重要なのは「なぜ債務超過になったのか」の原因分析です。一時的な要因なのか、構造的な問題なのかを明確にしてください。

【ステップ2】実現可能な再建計画を策定する
銀行が最も知りたいのは「どうやって返済能力を回復するのか」です。売上増加策、経費削減策、不採算事業からの撤退など、具体的な改善策と数値目標を盛り込んだ再建計画を作成します。計画は野心的すぎず、かといって消極的過ぎず、実現可能性を重視しましょう。

【ステップ3】早期に銀行に相談する
資金繰りが逼迫してから慌てて相談するのは最悪のシナリオです。問題が深刻化する前に、担当者に状況を説明し、リスケの必要性を伝えましょう。この際、経営者自身が責任を持って説明することが大切です。担当者は上司や審査部門への説明が必要なため、十分な検討時間を確保するためにも早めの相談が肝心です。

【ステップ4】誠実かつ具体的な交渉を行う
リスケ交渉では、「隠し事をしない」「数字を盛らない」「言い訳をしない」の3原則を守ります。その上で、具体的な返済計画(いつまでに、いくらの返済が可能か)を提示しましょう。例えば「1年間は利息のみの支払いにして、2年目から毎月10万円ずつ元金返済を再開したい」など、明確な条件を示します。

【ステップ5】合意後も継続的な関係構築を行う
リスケ合意はゴールではなく、信頼回復のスタートです。合意後は計画通りの返済を確実に行い、定期的に事業の進捗状況を報告しましょう。予定通り進まない場合も、早めに相談することで信頼関係を維持できます。好調時には少額でも追加返済を行うジェスチャーも効果的です。

銀行側も「貸しはがし」よりも企業の再生を望んでいます。特に地域金融機関は、地元企業の存続に強い関心を持っています。適切な準備と誠実な対応で、債務超過企業でもリスケジュールは十分に可能です。最後に、必要に応じて中小企業診断士や認定支援機関などの専門家の力を借りることも検討してください。彼らの支援があれば、銀行との交渉もスムーズに進む可能性が高まります。

【監修者】ブルーリーフパートナーズ
代表取締役 小泉 誉幸

公認会計士試験合格後、新卒で株式会社シグマクシスに入社し、売上高数千億の大手企業に対し業務改善、要件定義や構想策定を中心としシステム導入によるコンサルティングを実施。その後、中堅中小企業の事業再生を主業務としているロングブラックパートナーズ株式会社にて財務DD、事業DD、再生計画の立案、損益改善施策検討に従事。ブルーリーフパートナーズ株式会社設立後は加え税理士法人含む全社の事業推進を実施。
・慶應義塾大学大学院商学研究科修了

事業が厳しいと感じたら、早めの決断が重要です。
最適な再生戦略を一緒に考え、実行に移しましょう。