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2026年02月03日

グローバル競争に勝つ:事業再生とDX推進による日本企業の復活戦略

事業再生

今日のグローバルビジネス環境において、日本企業は未曾有の競争圧力と構造的課題に直面しています。かつて世界をリードした日本の製造業やサービス業は、デジタル革命の波に乗り遅れ、海外企業との競争で苦戦を強いられています。しかし、適切な事業再生戦略とDX推進によって、日本企業が再び世界市場で輝く可能性は十分にあります。

本記事では、企業再生・事業承継・M&Aのエキスパートとしての知見から、日本企業が直面する課題と、それを克服するための具体的戦略をご紹介します。事業の選択と集中、デジタルトランスフォーメーションの実践方法、組織文化の刷新など、企業変革に必要な要素を包括的に解説していきます。

特に中堅・中小企業の経営者や幹部の方々にとって、自社のビジネスモデルを見直し、グローバル競争に勝ち抜くための実践的なヒントとなる内容です。「守りの再生」から「攻めの経営」へと転換するための道筋を、成功事例とともに詳細に解説していきます。

1. 日本企業が今すぐ取り組むべき事業再生の3つのステップ

日本企業のグローバル競争力低下が深刻な問題となっている。かつては世界市場を席巻した日本企業も、現在では多くがその地位を失いつつある。事業再生は単なる企業存続のためだけでなく、真のグローバルプレーヤーへと返り咲くための必須プロセスだ。本稿では日本企業が今すぐ実践すべき事業再生の3つの具体的ステップを解説する。

第一に、「徹底的な現状分析と市場再定義」が必要だ。多くの企業が陥りがちな罠は、過去の成功体験や既存事業の枠組みにとらわれすぎることである。例えばソニーは家電メーカーとしての自己認識から脱却し、エンターテインメント企業へと自らを再定義することで復活を遂げた。企業は自社の強みと弱みを客観的に分析し、市場環境の変化を冷静に受け止める必要がある。経営コンサルティング大手のマッキンゼーによると、事業再生に成功した企業の85%は、現状分析に外部の視点を積極的に取り入れているという。

第二のステップは「不採算事業からの大胆な撤退と経営資源の再配分」である。多くの日本企業は事業の選択と集中に踏み切れず、全方位戦略を維持したまま全体が沈んでいくケースが少なくない。日立製作所は家電事業から撤退し、社会インフラやIT事業へと経営資源を集中させることで、収益力を大幅に改善させた。不採算事業にしがみつくことは「沈みゆく船から逃げない」勇気ではなく、企業全体の価値を毀損する判断ミスである場合が多い。事業の定期的なポートフォリオ見直しは企業存続の鍵となる。

第三に「デジタル技術を活用した業務変革と新規収益源の創出」が挙げられる。DXは単なる業務効率化ではなく、ビジネスモデル自体の変革を意味する。トヨタ自動車は「CASE」と呼ばれる自動車産業の構造変化に対応するため、MaaSプラットフォームの開発やソフトウェア開発企業との提携を積極的に進めている。製造業であっても、デジタル技術を活用したサブスクリプションモデルやデータビジネスなど、新たな収益源の創出が不可欠だ。

これら3つのステップを実行するには、トップマネジメントの強いリーダーシップと変革への覚悟が必須条件となる。事業再生は一時的な業績改善策ではなく、企業の長期的な競争力を回復するための戦略的プロセスである。日本企業がグローバル競争に再び勝利するためには、過去の成功体験から脱却し、未来を見据えた大胆な変革に踏み出す勇気が今こそ求められている。

2. グローバル市場で存在感を示す:DX推進で実現した企業変革の実例

グローバル市場における日本企業の存在感低下が叫ばれる中、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し、見事に復活を遂げた企業が増えています。これらの成功事例から、日本企業が世界で勝ち残るための戦略を探ります。

トヨタ自動車は「Woven City」構想を通じて、自動車メーカーからモビリティカンパニーへの変革を進めています。IoT技術を活用した未来都市の実証実験は、単なる自動車製造の枠を超え、モビリティサービス全体を見据えた戦略として世界から注目を集めています。

また、コニカミノルタは印刷機器メーカーから、画像診断AI技術を駆使したヘルスケアソリューション提供企業へと転換。欧米市場でのM&Aを積極的に行い、デジタル技術を核とした事業ポートフォリオの再構築に成功しました。特に同社のデジタル診断支援システムは医療現場のワークフロー改革に貢献し、グローバルシェアを拡大しています。

ファーストリテイリングはサプライチェーン全体のデジタル化を推進。AIを活用した需要予測と生産管理により、在庫の最適化と環境負荷低減を両立させました。さらに、オンラインとオフラインを融合したOMOチャネル戦略で、アジア市場での急速な成長を実現しています。

日立製作所は「Lumada」プラットフォームを中心に、IoTやAIを活用したデジタルソリューション事業へのシフトを加速。製造業からデジタルサービス企業への転換により、グローバル市場での競争力を高めています。特に社会インフラ領域でのデジタル技術の応用は、環境問題や都市問題の解決策として国際的に評価されています。

これらの成功企業に共通するのは、単なるデジタル技術の導入ではなく、ビジネスモデルそのものの変革です。重要なのは次の3点です。まず、顧客体験を起点としたバリューチェーンの再設計。次に、データドリブンな意思決定への移行。そして、アジャイル型の組織文化への転換です。

特筆すべきは、これらの企業が日本的経営の強みを失うことなく、グローバル標準との融合を図っている点です。品質へのこだわりや長期的視点といった日本企業の伝統的価値観を維持しつつ、デジタル技術を活用してスピード感のある変革を実現しています。

DX推進を通じたグローバル競争力の獲得は、もはや選択肢ではなく必須条件です。成功企業の事例から学び、自社の強みを活かしたデジタル戦略を構築することが、日本企業の世界市場での復権への道となるでしょう。

3. 「選択と集中」の新常識:コア事業の見極め方と経営資源の最適配分

日本企業が直面している最大の課題のひとつが、事業ポートフォリオの最適化だ。「選択と集中」という言葉は長年使われてきたが、実際に実行できている企業は限られている。特に伝統ある大企業ほど、過去の成功体験から脱却できず、不採算事業の整理が遅れがちだ。

コア事業を見極めるためには、まず「市場の成長性」と「自社の競争優位性」という二つの軸で全事業を評価する必要がある。日立製作所は2010年代に入り、約300あった子会社を半分以下に削減し、社会インフラ事業に経営資源を集中させた結果、収益性を大幅に改善させた成功例だ。

現代の「選択と集中」では、単なる事業の取捨選択だけでなく、バリューチェーン内のどの部分に注力するかという視点も重要になっている。例えばソニーは、テレビ事業の製造部門を縮小する一方で、イメージセンサーなど高付加価値部品や、コンテンツビジネスに経営資源をシフトさせ、収益構造を転換した。

また、経営資源の配分においては「ダイナミック・リソース・アロケーション」の考え方が鍵となる。従来の予算編成のように前年比で微調整するのではなく、ゼロベースで資源配分を見直す姿勢が求められる。京セラの「アメーバ経営」は、小集団単位で採算を可視化し、経営資源の流動性を高めることに成功している事例だ。

DX時代においては、データ分析に基づく科学的なポートフォリオ管理が可能になっている。例えば、富士フイルムはAIを活用した事業評価システムを構築し、各事業の将来性を定量的に予測して投資判断を行っている。このような客観的な指標に基づく意思決定が、感情や既得権益に左右されない「選択と集中」を実現する。

今後の日本企業は、グローバル市場での生き残りをかけて、より大胆かつスピーディな事業ポートフォリオの最適化が求められる。その際、単純な「選択と集中」ではなく、時代の変化に応じた柔軟性と、将来を見据えた戦略的な意思決定が成功の鍵となるだろう。

4. 海外競合に負けない組織づくり:企業文化の刷新とタレントマネジメント戦略

日本企業がグローバル市場で競争力を取り戻すためには、組織づくりの根本的な変革が不可欠です。多くの日本企業は依然として階層型の意思決定プロセスや同質性を重視する企業文化を維持していますが、この構造では変化の激しい国際市場で海外企業に後れを取ってしまいます。

まず注目すべきは「企業文化の刷新」です。トヨタ自動車が推進する「トヨタウェイ2020」では、従来の改善文化を維持しながらも、より大胆なイノベーションとリスクテイクを奨励する文化への転換が図られています。同様に、ソニーグループも「One Sony」という統合的アプローチによって、部門間の壁を取り払い、クリエイティビティを最大化する取り組みを強化しています。

次に重要なのが「多様性の受け入れ」です。海外市場で成功している日立製作所やユニクロを展開するファーストリテイリングは、外国籍の役員や管理職を積極的に登用し、多様な視点を経営に取り入れています。これにより市場ニーズへの感度が高まり、イノベーションが加速します。

さらに「意思決定プロセスの迅速化」も不可欠です。伝統的な稟議制度は時間がかかりすぎるため、資生堂やオムロンなどは権限委譲を進め、現場レベルでの判断スピードを高めています。特にデジタル関連の意思決定では、数ヶ月かけていたプロセスを数週間で完了させる体制へと移行する企業が増えています。

最後に「タレントマネジメントの革新」が求められます。楽天やメルカリといった比較的新しい企業は、従来の年功序列ではなく、成果主義と専門性に基づく評価・報酬システムを導入しています。また、リクルートホールディングスのように社内起業家制度を設け、イントラプレナーシップ(社内起業家精神)を奨励する取り組みも効果的です。

こうした組織改革を実現するためには、トップマネジメントの強いコミットメントと長期的視点が欠かせません。パナソニックホールディングスのように、事業ポートフォリオの再編と同時に組織文化改革に着手し、中長期的な視点で人材育成に投資する姿勢が重要です。

海外競合に負けない組織づくりは一朝一夕には実現しませんが、企業文化の刷新とタレントマネジメント戦略の見直しによって、日本企業はグローバル競争力を取り戻す確かな一歩を踏み出すことができます。

5. データ駆動型経営への転換:日本企業が取り組むべきDXロードマップの全容

日本企業がグローバル競争で再び主導権を握るためには、データ駆動型経営への本格的な転換が不可欠となっている。多くの企業がDX推進を掲げるものの、具体的な道筋が見えずに停滞しているのが現状だ。本項では、日本企業が実践すべき段階的なDXロードマップを解説する。

第一段階は「データ基盤の整備」である。多くの日本企業では、部門ごとに異なるシステムが導入され、データサイロが発生している。トヨタ自動車が全社的なデータレイク構築に投資したように、まずはデータの一元管理環境を整備することが急務だ。クラウド移行と並行して、レガシーシステムの刷新も計画的に進めるべきである。

第二段階は「データ分析能力の向上」だ。単にデータを集めるだけでなく、そこから意味のある洞察を引き出す能力が求められる。ソニーグループが実施したように、全社員へのデータリテラシー教育と、専門的なデータサイエンティストの育成を同時に進めることが効果的である。経営層自身がデータに基づく意思決定の重要性を理解し、実践することも重要な要素だ。

第三段階は「ビジネスモデルの変革」への移行である。AIやIoTを活用した新サービスの開発、サブスクリプションモデルへの転換など、データを収益化する仕組みづくりが必要になる。コマツの「KOMTRAX」のように、製品から得られるデータを活用した新たな顧客価値の創造が目指すべき方向性だ。

最終段階は「エコシステムの構築」だ。自社だけでなく、サプライヤーやパートナー企業も含めたデータ連携による新たな価値創造を目指す。日立製作所の「Lumada」のようなプラットフォームビジネスへの展開も視野に入れるべきだ。

実際のDX推進においては、小さな成功体験の積み重ねが重要である。野村総合研究所の調査によれば、成功企業の多くはPoC(概念実証)から本格導入までのサイクルが短く、失敗からも積極的に学んでいる。また、全社横断的なDX推進組織の設置や、外部専門家の活用も成功要因となっている。

日本企業特有の課題としては、意思決定の遅さや失敗を許容しない企業文化がある。これらを克服するには、トップのコミットメントによる「攻めのDX」思考への転換が不可欠だ。デジタル人材の確保も重要課題であり、リスキリングと外部採用を組み合わせた人材戦略が必要となる。

データ駆動型経営への転換は一朝一夕に実現するものではない。しかし、明確なロードマップを描き、段階的に取り組むことで、日本企業は再びグローバル競争力を獲得できるだろう。重要なのは今すぐ行動を起こし、継続的に改善していくことである。

【監修者】ブルーリーフパートナーズ
代表取締役 小泉 誉幸

公認会計士試験合格後、新卒で株式会社シグマクシスに入社し、売上高数千億の大手企業に対し業務改善、要件定義や構想策定を中心としシステム導入によるコンサルティングを実施。その後、中堅中小企業の事業再生を主業務としているロングブラックパートナーズ株式会社にて財務DD、事業DD、再生計画の立案、損益改善施策検討に従事。ブルーリーフパートナーズ株式会社設立後は加え税理士法人含む全社の事業推進を実施。
・慶應義塾大学大学院商学研究科修了

事業が厳しいと感じたら、早めの決断が重要です。
最適な再生戦略を一緒に考え、実行に移しましょう。