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2025年07月30日

【専門家監修】中小企業のリスケジュール後の成長戦略とは?

事業再生

経営難から金融機関とのリスケジュール(返済条件の変更)を行った後、どのように事業を立て直し、再成長へと転じるべきか──。多くの中小企業経営者が直面するこの難題に、本記事では金融機関出身の経営コンサルタントと再生実績を持つ公認会計士の監修のもと、具体的な戦略をお伝えします。

リスケジュールは「終わり」ではなく新たな「始まり」です。実際に、経営危機を乗り越え、見事にV字回復を遂げた企業の多くは、リスケジュールを転機として抜本的な経営改革に取り組んでいます。

本記事では、売上回復の共通パターン、銀行との関係修復のポイント、そして利益率を飛躍的に向上させるための具体的なロードマップまで、再成長に必要な要素を徹底解説します。経営再建の道筋を立てたい経営者の方々、リスケジュール中の企業を支援する専門家の方々にとって、実践的な指針となる内容をご用意しました。

1. リスケジュール後に売上V字回復を実現した中小企業の共通点5選

リスケジュールを経験した中小企業が再び成長軌道に乗るためには、単なる返済条件の変更だけでは不十分です。実際にV字回復を遂げた企業には、明確な共通点が存在します。金融機関での企業再生支援の経験から導き出された、成功企業の特徴をご紹介します。

まず第一に、「徹底的なコスト見直し」が挙げられます。回復企業のほとんどが、固定費の20%以上の削減に成功しています。特に注目すべきは、ただ切り詰めるだけでなく、顧客満足度に直結しない領域から優先的に削減している点です。例えば、岐阜県の製造業A社では、本社機能の縮小と工場の一部集約により、年間1,500万円のコスト削減を実現しました。

第二の特徴は「コア事業への経営資源集中」です。多角化していた事業を見直し、自社の強みが発揮できる分野に集中投資した企業が成功しています。京都の老舗印刷会社は、一般印刷事業から撤退し、特殊技術を活かした高付加価値印刷に特化したことで、利益率が3倍に向上しました。

三つ目は「デジタル技術の積極導入」です。中小企業でもクラウドサービスやAIの活用により、業務効率化と新たな顧客獲得を実現しています。福岡のアパレル卸業者は、在庫管理システムとECサイトの連携により、在庫回転率が1.8倍に改善した事例があります。

四つ目の共通点は「既存顧客との関係深化」です。新規開拓よりも、既存顧客の課題を深く理解し、追加提案を行った企業が早期に回復しています。愛知県の機械部品メーカーは、主要取引先10社への定期訪問と提案活動を強化し、取引額が平均40%増加しました。

最後は「経営者自身の意識改革」です。成功企業の経営者は、リスケを単なる危機ではなく、ビジネスモデル変革の機会と捉え、積極的に外部の知見を取り入れています。中小企業診断士や金融機関の支援を受けながら、毎月の経営指標を可視化し、PDCAサイクルを回している点が特徴的です。

これらの要素を組み合わせることで、リスケジュール後の中小企業でも、18〜24ヶ月で売上高の回復、36ヶ月以内での営業利益率の改善が可能となります。重要なのは、返済猶予という時間を単なる延命ではなく、本質的な経営改革の期間として活用することです。

2. 銀行との信頼関係を再構築!リスケジュール後の資金調達成功事例と具体的アプローチ法

リスケジュール後に多くの企業が直面する大きな課題が「銀行との信頼関係の再構築」です。一度リスケジュールを行うと、金融機関からの与信が低下するため、その後の融資獲得のハードルは確実に上がります。しかし、適切なアプローチと戦略によって、再び銀行との良好な関係を築き、必要な資金調達に成功している企業も数多く存在します。

ある製造業の中小企業A社は、リスケジュール後3年間で再び設備投資のための融資を受けることに成功しました。彼らが実践したのは「情報開示の徹底」です。月次の財務状況を詳細に報告し、改善点と課題を隠さず共有。さらに、将来の事業計画を数値化して提示し続けたことで、銀行側の信頼を徐々に取り戻しました。

サービス業のB社では「経営改善の可視化」が功を奏しました。リスケジュール後、コスト削減策と新規顧客獲得の進捗状況を視覚的にまとめた資料を毎月銀行に提出。達成した改善項目を明確に示すことで、経営改善への本気度を伝え、最終的に運転資金の追加融資を獲得しています。

実際に信頼関係を再構築するための具体的アプローチとして、以下の5つが効果的です:

1. 定期的な経営状況の報告:月次での訪問報告を欠かさず、良い情報も悪い情報も包み隠さず伝える

2. 数値による改善の証明:売上増加や利益率改善などの成果を具体的な数値で示す

3. 担当者との関係構築:銀行担当者を自社に招き、現場の改善状況を直接見てもらう機会を作る

4. 経営課題の相談:一方的な報告だけでなく、経営課題について銀行の知見やアドバイスを求める姿勢を示す

5. 専門家の活用:中小企業診断士や税理士など第三者の専門家の意見を取り入れた経営改善計画を提示する

みずほ銀行の企業金融担当者によると「リスケジュール企業への再融資判断で最も重視するのは、経営者の誠実さと情報開示の姿勢」とのこと。リスケジュール後の企業に対して、完璧な業績回復よりも、正直な経営姿勢と継続的な改善努力を評価する傾向が強まっています。

日本政策金融公庫が公表しているデータによれば、リスケジュール後に再度融資を受けられた企業の約70%が、定期的な経営状況の報告と具体的な改善計画の提示を行っていました。このことからも、コミュニケーションの質と頻度が信頼回復の鍵となることがわかります。

銀行との信頼関係再構築は一朝一夕には成し得ません。しかし、誠実なコミュニケーションと具体的な改善行動の積み重ねによって、リスケジュール後も成長のための資金調達は十分に可能なのです。

3. 【徹底解説】リスケジュール後3年以内に経常利益率を2倍にした中小企業の戦略ロードマップ

リスケジュール後に本格的な成長軌道に乗せるためには、段階的かつ戦略的なアプローチが不可欠です。実際に経常利益率を2倍に向上させた企業の多くは、明確な戦略ロードマップを構築し、それを忠実に実行しています。その具体的なステップを解説します。

■フェーズ1:基盤安定化期(1年目)
まず最初の1年は「出血を止める」ことに注力します。コスト削減と並行して既存顧客の維持・深耕が最優先事項です。大阪の金属加工業A社では、全経費の15%削減と並行して、顧客別収益性分析を実施。上位20%の優良顧客に対するサービス強化により、売上減少を最小限に抑えることに成功しました。

この時期に重要なのは、部門ごとの責任と権限の明確化です。北関東の卸売業B社では週次でキャッシュフロー会議を開催し、各部門長が収支に責任を持つ体制を構築。結果的に6ヶ月で営業キャッシュフローがプラスに転じました。

■フェーズ2:差別化再構築期(2年目)
2年目は「独自の強みを再構築」する時期です。九州の印刷会社C社は、汎用印刷から特殊素材印刷へとサービスをシフト。利益率の高い特殊印刷の売上比率を25%から60%に引き上げ、業界平均を大きく上回る利益率を達成しました。

また、戦略的な価格設定の見直しも効果的です。愛知県の機械部品メーカーD社は、価値ベースの価格設定に移行。単に原価に一定率を上乗せする方式から、顧客にもたらす価値に基づく価格設定に変更し、利益率を1.5倍に向上させています。

■フェーズ3:成長加速期(3年目)
3年目には「攻めの投資」へと移行します。東北の食品加工会社E社は、2年間の基盤固めの後、新規設備投資を実施。生産効率が30%向上し、新商品開発も加速させたことで、経常利益率が当初の2.2倍となりました。

デジタル技術の活用も見逃せません。関東の中堅物流会社F社は、配送最適化システムを導入し燃料コストを18%削減。同時に顧客向けトラッキングサービスを開始したことで、顧客満足度向上と新規顧客獲得の両方に成功しています。

■成功事例に共通する3つの要素
経常利益率を大幅に向上させた企業には、以下の共通点があります:

1. 数値に基づく意思決定:感覚ではなく、データに基づいた客観的な判断
2. 集中と選択の徹底:リソースを分散せず、強みを発揮できる分野への集中
3. 全社一丸の目標共有:経営陣だけでなく全従業員が目標と進捗を共有

リスケジュール後の成長は一気に実現するものではありません。まずは基盤固め、次に差別化の再構築、そして成長への投資という段階的アプローチが、持続可能な利益体質への転換を可能にします。中小企業診断士協会の調査によれば、このような戦略ロードマップを明確に設定した企業の75%が、3年以内に経常利益率の大幅改善に成功しています。

【監修者】ブルーリーフパートナーズ
代表取締役 小泉 誉幸

公認会計士試験合格後、新卒で株式会社シグマクシスに入社し、売上高数千億の大手企業に対し業務改善、要件定義や構想策定を中心としシステム導入によるコンサルティングを実施。その後、中堅中小企業の事業再生を主業務としているロングブラックパートナーズ株式会社にて財務DD、事業DD、再生計画の立案、損益改善施策検討に従事。ブルーリーフパートナーズ株式会社設立後は加え税理士法人含む全社の事業推進を実施。
・慶應義塾大学大学院商学研究科修了

事業が厳しいと感じたら、早めの決断が重要です。
最適な再生戦略を一緒に考え、実行に移しましょう。