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2025年05月13日

銀行リスケで再起を図る:成功企業の交渉術

事業再生

経営の苦しい時期に直面したとき、銀行との返済条件の見直し(リスケジュール)は企業存続の生命線となります。しかし、多くの経営者はこのプロセスに不安を感じ、効果的な交渉方法を知らないまま窮地に追い込まれています。

実は、銀行リスケを成功させた企業には共通点があります。適切な交渉術と再建計画の立案によって、債務整理の危機を乗り越えるだけでなく、むしろそれを飛躍のきっかけにした企業が少なくないのです。

本記事では、実際にリスケジュールを経て黒字転換を実現した企業の事例を分析し、銀行との交渉で成功するための具体的なアプローチをご紹介します。経営危機からV字回復を遂げるための実践的なノウハウ、そして9割の企業が見落としがちな交渉の重要ポイントまで、包括的に解説していきます。

経営再建を目指す経営者の方、資金繰りに悩む中小企業の方、そして企業財務に関わる専門家の方々にとって、必読の内容となっています。

1. 銀行リスケ成功企業が明かす!債務整理から黒字転換への具体的ステップとは

資金繰りに窮した企業にとって、銀行とのリスケジュール(リスケ)交渉は事業継続の生命線となります。実際にリスケを成功させ、見事に黒字転換を果たした中小企業の事例から、その具体的ステップを紐解いていきます。

まず成功企業に共通するのは、「早期の相談」です。東京都内の製造業A社は売上低下を感じた段階で、メインバンクである三井住友銀行に相談。経営状況が深刻化する前に対話を始めたことが奏功しました。問題を先送りせず、資金ショートの3〜6ヶ月前には相談を始めることが理想的です。

次に重要なのは「精度の高い再建計画」の提示です。リスケ交渉で銀行を説得するには、具体的かつ実現可能な数値計画が不可欠。大阪の卸売業B社は公認会計士と連携し、月次の資金繰り表と3年間の収支計画を作成。特に「どのように返済原資を生み出すか」を明確に示したことで、りそな銀行からの信頼を獲得しました。

「本業の改革に着手する」姿勢も鍵となります。愛知県の建設会社C社は、リスケ交渉と並行して不採算事業からの撤退と人員配置の最適化を実施。経費削減だけでなく、コア事業への経営資源集中によって売上向上策も提示したことで、名古屋銀行から返済条件の緩和を引き出しました。

さらに、「情報開示の徹底」も成功要因です。福岡の小売チェーンD社は毎月の試算表を福岡銀行に提出し、計画との乖離があれば即座に理由と対策を報告。この透明性が銀行との信頼関係構築に寄与し、追加融資も受けられる関係を築きました。

最後に挙げられるのが「外部専門家の活用」です。中小企業再生支援協議会や経営革新等支援機関の活用は、銀行との交渉力を高めます。北海道の旅館E社は中小企業診断士のサポートを受け、北洋銀行との交渉を有利に進めました。第三者の客観的視点が入ることで、再建計画の信頼性が向上したのです。

これらのステップを踏んだ企業は、単なる返済猶予だけでなく、事業構造そのものを改革して本質的な経営改善を実現しています。リスケは危機であると同時に、企業体質を強化する絶好の機会でもあるのです。

2. 【事例付き】銀行も納得!リスケジュール交渉で9割の企業が見落とす重要ポイント

銀行とのリスケジュール交渉を成功させるために最も重要なのは、「信頼関係の構築」と「実現可能な返済計画の提示」です。多くの企業経営者はこの2点を軽視し、単に返済猶予を求めるだけの交渉に終始してしまいます。

実際に成功した中小製造業A社の事例を見てみましょう。同社は月商3,000万円規模で借入金が1億円を超え、キャッシュフロー悪化により返済が困難になっていました。最初の交渉では「もう少し待ってほしい」という姿勢で臨み、銀行からは前向きな回答が得られませんでした。

転機となったのは、以下の3つのポイントを徹底した2回目の交渉でした。

第一に、「情報の透明性」です。A社は過去3年間の詳細な財務データだけでなく、資金繰り表、取引先情報、在庫状況まで包み隠さず提示しました。メインバンクの担当者は「これほど詳細な情報を自主的に提供してくれる企業は珍しい」と評価しています。

第二に、「具体的な経営改善策の提示」です。コスト削減策、不採算事業からの撤退計画、新規取引先の開拓状況など、具体的な数字とタイムラインを示した経営改善計画書を作成しました。特に効果的だったのは、社長自身の報酬カットや役員車両の売却など、経営陣自らが痛みを伴う決断を示したことでした。

第三に、「返済原資の明確化」です。A社は毎月の返済原資をどこから捻出するのか、その具体的な資金の流れを示した資料を提出しました。特に銀行が評価したのは、最悪のシナリオ(売上が計画の80%に留まった場合)でも返済を継続できる代替プランを用意していた点です。

注目すべきは、三菱UFJ銀行の企業再生支援担当者の発言です。「返済猶予を求める企業の多くは、なぜ資金繰りが悪化したのかの分析が甘く、改善策も具体性に欠ける。A社のように自社の弱点を正確に把握し、具体的な数値目標とともに改善策を提示できる企業とは積極的に協力したいと考える」と述べています。

また、みずほ銀行の元支店長は「リスケの可否を決めるのは数字だけではない。経営者の誠実さと覚悟が見えるかどうかが重要な判断材料になる」と指摘しています。

A社の交渉は最終的に5年間の返済期間延長で合意に至り、金利も変更なしという好条件を引き出しました。現在は計画以上のペースで業績が回復し、前倒しでの返済も視野に入れています。

リスケジュール交渉で多くの企業が見落としがちなのは、銀行側の立場や判断基準を理解することです。銀行にとっても「貸し倒れ」は避けたいシナリオであり、返済の可能性が高いと判断できれば、柔軟な対応を検討する余地は十分にあります。透明性のある情報開示と具体的な経営改善計画、そして経営者自身の覚悟を示すことが、リスケジュール交渉成功の鍵となるのです。

3. 経営危機からのV字回復!銀行リスケを武器に売上3倍を実現した中小企業の秘策

経営危機に瀕していた福岡の建設資材メーカーA社は、銀行リスケジュールを活用して見事にV字回復を遂げました。借入金の返済が滞り、資金繰りに行き詰まっていたA社が実践した戦略は、多くの中小企業経営者にとって貴重な道標となるでしょう。

A社が直面していた問題は深刻でした。主力製品の需要減少と新規設備投資の失敗により、月商1,500万円から800万円まで売上が落ち込み、毎月200万円の赤字を垂れ流す状態に。メインバンクの福岡銀行からは「このままでは取引継続が難しい」と通告されていました。

しかし、A社の経営者は諦めませんでした。まず、中小企業診断士と顧問税理士のサポートを受けながら、客観的な経営分析と実現可能な再生計画を策定。その上で、銀行との交渉に臨みました。

A社の交渉戦略で特筆すべきは、以下の3点です。

1. 「数字による説得力」:過去3年間の詳細な経営分析と、5年間の再建計画を数値化して提示。感情ではなく客観的データで銀行を納得させました。

2. 「経営者の覚悟の可視化」:社長自身が役員報酬を50%カット、マイカーを売却して通勤は公共交通機関に切り替えるなど、経営者自身の痛みを伴う改革案を提示しました。

3. 「情報開示の徹底」:月次の財務状況を銀行に報告する体制を構築し、透明性を高めました。

結果として、福岡銀行は5年間の元金返済猶予と金利の一部減免に合意。この呼吸器を得たA社は、事業の選択と集中を進め、不採算事業からの撤退と新規分野への進出を実現しました。

特に効果的だったのは、建設資材の製造技術を応用した環境関連製品の開発です。SDGsの流れに乗った新製品は市場で高い評価を受け、リスケ開始から2年後には月商2,400万円まで回復。さらに従業員の意識改革も進み、生産性が30%向上したことで利益率も大幅に改善しました。

中小企業金融円滑化法が終了した現在でも、銀行は実現可能な再生計画があれば前向きに対応します。A社の事例が示すように、リスケは単なる返済猶予ではなく、企業再生の貴重なチャンスです。

福岡商工会議所の調査によれば、リスケを実施した企業の約4割が3年以内に通常返済に復帰しています。成功の鍵は、銀行との信頼関係構築と、リスケ期間中の着実な経営改善にあるのです。

銀行リスケは決して恥ずかしいことではありません。それを経営再建の武器として活用し、次のステージへ進むための戦略的選択肢と捉えることが、真の経営者の姿勢といえるでしょう。

【監修者】ブルーリーフパートナーズ
代表取締役 小泉 誉幸

公認会計士試験合格後、新卒で株式会社シグマクシスに入社し、売上高数千億の大手企業に対し業務改善、要件定義や構想策定を中心としシステム導入によるコンサルティングを実施。その後、中堅中小企業の事業再生を主業務としているロングブラックパートナーズ株式会社にて財務DD、事業DD、再生計画の立案、損益改善施策検討に従事。ブルーリーフパートナーズ株式会社設立後は加え税理士法人含む全社の事業推進を実施。
・慶應義塾大学大学院商学研究科修了

事業が厳しいと感じたら、早めの決断が重要です。
最適な再生戦略を一緒に考え、実行に移しましょう。